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とよ田みのる 「友達100人できるかな」

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 今回ご紹介する作品はとよ田みのる先生の「友達100人できるかな」であります。思えば熱帯雨林の導きによって「FLIP-FLAP」と出会って以来、私はとよ田先生を追いかけています。「タケヲちゃん物怪録」、「CATCH & THROW」、「ラブロマ」と来まして、どれもこれも面白く、「この人の作品にはハズレがないのか?」と戦慄しておりました。

 そしてこの度、「友達100人できるかな」を読み終えました。いやぁ、震えました!どうかしています、この人は!(もちろん褒めてますよ)これは感想を書こう!書きたい!いや、書かせてください!ということで、書かせてください。それでは物語の冒頭からお話ししましょう。

 

 

 2009年。小学校教諭である柏直行(かしわなおゆき)は、妻である幸代が出産のため入院したということで、慌てて病院に駆けつける。つわりが酷かっただけと聞き、安心する直行であったが、ベットの横は見慣れぬ人影がいた。彼(彼女?)は自分は宇宙人であり、間もなく地球侵攻が開始される旨を告げる。

 しかしこの侵攻には条件があった。対象となる星に相互に友好的なコミュニケーションを行っている生命体、つまり「愛」を持った生命体がいるのならば、それらは文明を持った知的生命体であると判断され、侵攻は出来ないのだという。

 そしてこの星を代表する生命体である人類が愛を持つ存在であるかどうかをテストするため、サンプルに選ばれたのが直行なのであった。直行は病院の屋上に連れて行かれ、UFOの輝きを目にして気を失う。

 目を覚ますと、直行の体は小学3年生の頃の姿に戻っており、外には1980年の東京が広がっていた。宇宙人によれば、ここはパラレルワールドの1980年の東京であり、この世界で愛を立証するために、小学校卒業までの間に100人の友達を作らなければならないという。

 直行は友達になりたい相手にセットすると、互いの親愛度が分かる「カウンター」を与えられる。互いの親愛度が100%になった時、友達と認められるのだ。宇宙人は同年代の女の子の姿に擬態、道明寺さくらを名乗り、直行のテストの監視のため学校に通うという。

 友達100人で人類は救われ、出来なかったら人類滅亡。1980年の東京を舞台に、人類の命運を賭けた友達作りが始まった…!

 

 

 …スゴイ設定ですね。さすがとよ田先生、毎回毎回奇想天外な舞台設定をしてくれますね。さて、本作は1話完結形式で、毎回直行が友達作りに奮闘する姿が描かれています。「友達を作るだけだろ?」と侮るなかれ、これがまた、毎回深いドラマを繰り広げているのです。

 というのは、友達作りには宇宙人が設定したルールがあるからです。すなわち、

 

・友達成立した後、一か月以内に次の相手にセットしないと失格になる

 

 「失格=人類滅亡」ですから、次々と相手を見つけてセットしなければならず、したがって自分と同じような性格や趣味を持った相手ばかりを選んでいる時間はないのです。つまり直行は自分とは正反対の性格の相手と友達になる必要もあり、あるいは異性とも友達になる必要に迫られているのです。

 これにより、直行は様々な性格の人達と交流することになります。外交的な人、内向的な人、活動的な人、のんびりした人…。すなわち「多様な価値観」です。小学校教諭として指導する立場であった直行は、規律を重んじるが故に、少々融通の利かない性格でしたが、多くの個性に触れることで、多角的なモノの見方を獲得し、柔軟な心を取り戻していきます。

 

 しかし小学3年生に戻ったとはいえ、頭の中は元の大人のままですから、ついつい「大人が子供を相手にする時」の対応をしてしまいます。ここで友達作りのもう1つルールが効いてくるのです。それは、

 

・どちらかの親愛度が0%になった場合、失格となる

 

 つまり、いくらこちらが好意を抱いていても、相手から嫌われてしまったらオシマイなのです。直行の場合、先の大人による「上から目線」や大人な物の考え方がネックになることが多々あります。しかしながらこのルールにより、直行は同じ子供として相手とガチで組み合わなければ距離が開く一方であること悟り、その結果「相手の立場になって考える」ことの大切さを知り、「自分の本心をさらけ出す」ことの重要さを知ることになるのです。

 ですから、この物語は「友達になるってなんだろう?」という問いを投げかけていますが、同時に「大人とはこういう頭のカタイ生き物だ」と皮肉を込めているようにも思えます。

 実際、本作を読み始めた頃の私は、直行同様に「こうすれば上手くいくんじゃなかろうか」と理屈っぽく考えていました。しかし物語が進むにつれ、直行同様にそのような理屈が「全くムダ」であることを思い知らされるや、1巻冒頭を読んでいた自分がいかに「ワケ知り顔のオトナ」になっちゃっていたのかを痛感させられ、「歳とったな…。」と何故だか敗北感を感じたのでした。

 

 ということで、本作は以前にご紹介した「FLIP-FLAP」や「タケヲちゃん物怪録」と同様に、おそらくとよ田先生のライフワークであろう「他者との関係性」について掘り下げた作品であると言えるでしょう。しかし先述の2作品との決定的な違いは「登場人物の心をとてつもなく深く描いている」という点であります。

 それは直行が友達になる子供たちの、その多種多様なキャラ造形の素晴らしさにあります。最初は「そういえば昔、こんな感じの子、いたな…。」みたいな、ある意味「子供」に対するテンプレートでステレオタイプな印象を受けますが、しかし物語が進み、直行との交流が深まるにつれ、どの子達も多感で複雑な心を、そして小さな胸を痛める悩みを持っていることが分かります。それにがっちりと組み合う直行の姿はスピード感あふれる作画によって描かれ、もはや「子供同士の友達作り」ではなく、本音と感情が強くぶつかり合う激しさを持った、フルコンタクトの格闘技を思わせるのです。

 そこへもってきて、とよ田先生の真骨頂である「聞いていて(読んでいて)こっ恥ずかしくなるようなセリフ」のオンパレードです。「他者との関係性」という、いわば人間社会の持つ普遍的なテーマでありながら、怒涛のような「熱いセリフ」と「光速の作画」によって全く小難しさを感じず、読む者の心のど真ん中を射抜いてくるのです。

 

 また本作はSF(とよ田先生は藤子不二雄先生の大ファンらしいので、この場合は「すこしふしぎ」)としての設定もしっかりとしており、特に直行のテスト会場が「パラレルワールドの1980年」であるという点が秀逸です。おそらく過去を変えて2009年現在が変わってしまうことを防ぐためなのですが、しかし、この「パラレルワールドの1980年」という設定が、物語全体を通して非常に重要な意味を持っており、特に…、いやネタバレになるからやめます。とにかく、いや、本当に良く出来ています。

 

 現在はKindle版が入手出来ますが…。え?タダなの?おいおい、こんなスゲェ作品、タダって日本の出版界は大丈夫なのかしら。ともあれ、お気軽に読めますので、是非ご一読していただければと思います。

 

 

 

 さて、本作を読み終わり、真っ先に私が頭に思い浮かべたのは、ネットに溢れるSNSの数々でした。本作を読み終えた後では、これらがなんとも心許ないものに感じました。もちろん、これらのツールを否定するつもりはありませんが、次に思い浮かんだのは、宇宙人である道明寺さんの言葉でした。今回はこのセリフで締めたいと思います。

 

 

 「ナント不器用な人達なのでショウ」

 



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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

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