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いにしえゲーム回顧録 ハーフタイム 「MYST」

      2015/07/30   posted by


  今回はちょっと有名どころで、PSで発売された「MYST」という作品をご紹介します。

  MYSTは元々はPCのアドベンチャーゲーム(ADV)でしたが、さすがにPCだけあって、相当画期的な内容でありました。みなさんはADVというと、どういう形式を思い浮かべるでしょう。大抵の方が「ポートピア連続殺人事件」のような「コマンド選択形式(用意されたコマンドを選んでゲームを進める)」か、あるいは「ZORK」のような「コマンド入力形式(プレイヤーが『トル カギ』のようなコマンドを直接入力する)」を思い浮かべると思います。

  しかしMYSTはどちらでもありません。画面にはプレイヤーの周りの風景がCGで描かれ、選択すべきコマンドも、コマンドを入力するようなスペースもありません。あるのは矢印のマウスポインタだけ。プレイヤーが出来るのはポインタを動かし、クリックすることだけです。しかし、例えばドアを開けたいなら、ドアにポイントしてクリックすればドアは滑らかなアニメーションと共に開きます。また通路の先へ進みたければ、通路の先をクリックすれば先に進めますし、方向転換したければ、そちらの方向の画面の端をクリックすれば良いのです。そう、MYSTはクリックだけで全ての動作が可能なADVなのです。

 

  それではストーリーをご紹介しましょう。

 

  プレイヤーの目の前には「MYST」と記された一冊の本があります。開いてみると、そこにはMYSTという名の島についての記述が詳細に書かれていました。全ての記述を読み終え、最後のページを開くと、そこにはMYST島の挿絵が描かれています。…挿絵?いや、動いています。挿絵はまるで空撮カメラのようにMYST島上空を飛び回り、島の全景を映し出しています。霧煙る島には天文台があり、時計台があり、あれは沈没船でしょうか?船のマストのようなものも見えます。プレイヤーはその美しい島の姿に、思わず挿絵に触れてしまいます。次の瞬間、プレイヤーは波止場にいました。横を見ると沈没船が見えます。また丘の上を見ると天文台が見えました…。そう、プレイヤーはMYST島に運ばれてきたのです。

  この島はどこなのか?あの「MYST」という本はなんなのか?謎めいた島での冒険が始まります。

 

 

  と、このようなストーリーからお分かりのように、プレイヤーはMYST島に迷い込んだ形で訪れたために、この島の事が何一つ分かりません。だから島にはいくつかのオブジェクトや機械がありますが、その意味はもちろん、動かし方も分かりません。何冊かの本やメモなどの走り書きもありますが、プレイヤーに向けて書かれたものではないので、一読しただけでは意味が分かりません。つまり、プレーヤーは全くの手探りでこの島の謎を解かなければならないのです。

 

  とはいえ、ヒントがないわけではありません。ただそれらのヒントはヒントとして明確に提示されていません。何気ない記述、何気ない形状、何気ない音。しかしそれらを積極的に解釈することで、何らかのヒントとなるようにデザインされています。最初は見逃していたけれど、ある局面で初めて意味が分かる、そのような事が積み重なって、このゲームは構成されているのです。ですからプレイヤーは全ての場面に注意を払う必要があります。しかしその注意を逸らすものがこのゲームには用意されています。それはグラフィックなのです。

 

  当時、MYSTのグラフィックは非常に賞賛されました。少なくとも当時の最高水準のCGで、非常にリアリティを感じられるものだったのです。しかし現在の実物と見紛うほど進化したCGに比べれば貧弱に見えます。ところが面白いことに、CG技術が発達すればするほど、MYSTのグラフィックの美しさを強く感じるように思えます。何故でしょう?

 それはオブジェクトの記号的意味合いを余すことなく表現し、なおかつMYST島の持つ不可思議な世界観を破壊することなく、むしろ調和していたからです。つまりプレイヤーに謎を提示するオブジェクトは、そのオブジェクトが意味するもの以上の情報を与えたりしません。例えば「図書館」なら「事物を調べる」という図書館の本質的意味以上の装飾がないのです。つまり「機能しか示していない」わけですが、これは昨今のゲームの過度とも言えるエフェクトと比べると、逆に抜群のリアリティーを持ちます。そしてMYST島に存在する様々なオブジェクトはそれぞれ固有の意味をもちながら、全体としてMYST島の持つ独特の雰囲気を壊すことなく調和している、すなわち混沌を美しく表現出来ているのです。

 

 そしてこれらのグラフィックが、実はプレイヤーを惑わすミスディレクションにもなっているのです。つまり表面上は「図書館」という「情報しか」与えませんが、その「情報だけ」解釈しても謎は解けません。プレイヤーはその情報が持つ本質に沿った意図を読み取る必要があり、したがって、プレイヤーはその事物の機能に注意しながらも、同時に全体の構成、あるいは因果関係も考えなければならないのです。

 しかし身構える必要はありません。我々はただ騙され、この不可解なMYST島を体験すれば良いのです。ADVという性質上、ネタバレを回避するためには、これ以上の言及は出来ませんが、願わくばこの美しい島に多くの方が挑まれることを願います。

 

 以上、ハーフタイムショーでした。



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todome

過去のホームページ時代より寄稿させていただいておりましたが、とある作品を完結させぬままに十数年すっかり忘れ、この度親方の号令により、再び参加と相成りました、todomeと申します。 主に小話を寄稿させておりますが、マンガ、ゲームにつきましても、今後ご紹介させていただこうかと思っております。どうぞお付き合いください。

 - ゲーム, いにしえゲーム回顧録, トドメ氏

Comment

  1. galthie より:

    ハーフタイムってw
    確かお借りしましたね。
    「MYST」今みてみるとグラフィックいいですね。
    「todome」氏が書いているように必要最低限でありながら、効果的なグラフィックだから美しいと感じるのでしょうか。

    さすがに文章上手ですね。
    このゲームが好きなのが伝わってくるし、論理的な文章でもあると思います。
    さすがです。

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